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さかやのワンこう
酒屋のワン公
小川 未明
「童話文学」1928(昭和3)年7月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,017 字 · 6 页
親犬は、きちがいのようになって探していました。そこへ、三十あまりの旅の女が、三味線を抱えて門口から入ろうとすると、白い犬は、女の足にかみついたのです。この知らない女が、自分の子供を奪ったとでも思ったのでありましょう。女は、驚いて救いを求めました。
主人は、知らぬ顔をして、外へは出ませんでしたが、ワン公は、すぐ飛び出して犬を追いはらいました。女の足からは、血が流れていたのです。
「ここの犬は、狂犬ですか。」と、女は、たずねました。彼は、白犬が、子供を捨てられたために、気が狂っているのだということを話しますと、
「かわいい子をとられたのでは、人にかみつくも無理はありません。」と、女は、怒らずにいいました。
少年はこの三味線ひきの女を、やさしい人だと思いました。彼は、気の毒になって、女の足を水で洗って、自分の腰にさげている手ぬぐいを裂いて、傷口を巻いてやりました。女は、少年のしんせつを、心から、うれしく思ったのであります。
ワン公は、遠方まで用たしにやられました。帰る途中で、空の模様が変わって、雷が鳴り、ひどい夕立となりました。彼は、小さな御堂のひさしの下にはいって、すくんでいたのであります。