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さかやのワンこう
酒屋のワン公
小川 未明
「童話文学」1928(昭和3)年7月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,017 字 · 6 页
このとき、どこからか、青々とした、田の上を飛んで、すがすがしい空気に、羽音をたてる一羽の黒い水鳥があったかと思うと、小川の淵に下りました。それは、くちばしの黄色い鷭だったのです。
鷭は、首を傾けて考えていましたが、やがて、流れをまっすぐにあちらへ横切ってゆきました。流れには、さんらんとして、さざなみが雨の晴れた夕空の下に生じました。
西に沈みかけていた、真っ赤な太陽は、
「おお、元気だな。」と、鷭に声をかけました。
「やさしい、酒屋の小僧さんが、途方にくれていますから、水先案内をしてやります。」と、鷭は、かわいらしい目を上げて太陽を見ました。
その夜、ワン公は、着物をぬらして帰ったといって、酒屋のおかみさんにしかられていたのです。
「こんなに、着物をぬらすなんて、おまえ、ぼんやりだからだよ。」
彼は、どんな場合にでも、自分に、同情してくれるものがないのを悲しく感じました。
白壁の蔭にたって、ワン公は、芋の葉の上に止まった露を見て、空想にふけったのです。
「自分はあの露だったら、なんの悲しいこともないだろう。お月さまが、おまえはもうすこし世の中におれといわれたら、ああして、私は芋の葉の上にころがっている。