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のざらし
野ざらし
豊島 与志雄
「中央公論」1923(大正12)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,100 字 · 39 页
夜中に眼を覚したり、朝早く起き上ったりなさることが、時々あるものですから、私も少し心配になって聞いてみると、いくらか神経衰弱らしいと云って、自分を憐れむように微笑んでいなさるんでしょう。自分で微笑みを洩らしてる間は、神経衰弱なんて大したことじゃないわよ……。けれど、兎に角そういう際ですから、あなたも余り気をもませないように、早くどうにか片をつけたらいいじゃありませんか。」
達子が自分を急き立ててるのはその故だなと、昌作はふと考えついた。けれど、禎輔のそうした様子の方へ、彼の心は惹かされた。禎輔が夜中に眼を覚したり、ふいに朝早く起き上ったりすることが、会社の何かの事件のためではなくて、他に深い原因があるらしいのを、直覚的に彼は感じた。そして我知らず尋ねてみた。
「その他に片山さんの様子に変ったことはありませんか。」
「まあ!……全くあなたの方が今日は変よ。一寸何か云えばすぐ片山を狂人扱いにして!」
達子からじっと見られてる顔を、昌作は伏せてしまった。心が苦しくなってきた。黙っておれなかった。
「でもあなたは、片山さんがそんなに苦しんでいらっしゃるのに、平気で落着いていられるんですか。