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のぎくのはか

野菊の墓

伊藤 左千夫

「ホトトギス」1906(明治39)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,539 字 · 67 页

青空文庫

南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」

僕は懐にあった紙の有りたけを力杖に結ぶ。この時ふっと気がついた。民さんは野菊が大変好きであったに野菊を掘ってきて植えればよかった。いや直ぐ掘ってきて植えよう。こう考えてあたりを見ると、不思議に野菊が繁ってる。弔いの人に踏まれたらしいがなお茎立って青々として居る。民さんは野菊の中へ葬られたのだ。僕はようやく少し落着いて人々と共に墓場を辞した。

僕は何にもほしくありません。御飯は勿論茶もほしくないです、このままお暇願います、明日はまた早く上りますからといって帰ろうとすると、家中で引留める。民子のお母さんはもうたまらなそうな風で、

「政夫さん、あなたにそうして帰られては私等は居ても起ってもいられません。あなたが面白くないお心持は重々察しています。考えてみれば私どもの届かなかったために、民子にも不憫な死にようをさせ、政夫さんにも申訣のないことをしたのです。私共は如何様にもあなたにお詫びを致します。民子可哀相と思召したら、どうぞ民子が今はの話も聞いて行って下さいな。あなたがお出でになったら、お話し申すつもりで、今日はお出でか明日はお出でかと、実は家中がお待ち申したのですからどうぞ……」