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きんがでずに、なしのうまれたはなし

金が出ずに、なしの産まれた話

小川 未明

「童話文学」1930(昭和5)年6月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,640 字 · 6 页

青空文庫

ある金持ちが、毎日、座敷にすわって、あちらの山を見ていますと、そのうちに、

「なにか、あの山から、宝でも出ないものかなあ。」というような空想にふけりました。

その山というのは、あまり高くはなかったが、形がいかにもよかったのです。

ちょうど、そのころ、旅の技師が、この村を通って、

「この山には、銅がありそうだ。」といったといううわさを金持ちはききこみました。

「やはり虫が知らせたのだ。毎日、自分はあの山を見ていると、なにか宝がありそうな気がしてならなかった。」

ある日、金持ちは、金づちを腰にさして、山へ出かけてゆきました。そして、山の中に、頭を出している石を、コチン! と打っては、欠いてみました。すると、ぴかっとして日の光に、金色にかがやくものがまじっていました。それから、夢中になって、あたりに落ちている石を割ってみたり、拾い上げて、日にさらしてみたりしますと、どれにも、なにかぴかぴかと光るものがはいっていました。

「銅ばかりでなく、金が出るかもしれない。」

金持ちは、もう頭の中は、宝を掘りあてたときの喜びでいっぱいになって、考え顔をしてもどってまいりました。