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きんのわ
金の輪
小川 未明
「読売新聞」1919(大正8)年1月21~23日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,640 字 · 4 页
太郎はかなたの往来を見ますと、少年が二つの輪をまわして、走ってきました。その輪は金色に輝いて見えました。少年はその往来を過ぎるときに、こちらを向いて、昨日よりもいっそう懐かしげに、微笑んだのであります。そして、なにかいいたげなようすをして、ちょっとくびをかしげましたが、ついそのままいってしまいました。
太郎は、圃の中に立って、しょんぼりとして、少年の行方を見送りました。いつしかその姿は、白い路のかなたに消えてしまったのです。けれど、いつまでもその少年の白い顔と、微笑とが太郎の目に残っていて、取れませんでした。
「いったい、だれだろう。」と、太郎は不思議に思えてなりませんでした。いままで一度も見たことがない少年だけれど、なんとなくいちばん親しい友だちのような気がしてならなかったのです。
明日ばかりは、ものをいってお友だちになろうと、いろいろ空想を描きました。やがて、西の空が赤くなって、日暮れ方になりましたから、太郎は家の中に入りました。
その晩、太郎は母親に向かって、二日も同じ時刻に、金の輪をまわして走っている少年のことを語りました。母親は信じませんでした。