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きんのうお
金の魚
小川 未明
「面白倶楽部」1921(大正10)年1月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,768 字 · 10 页
この魚は、まれに河の中にすんでいるものだ。」と、その占い者はいいました。
金持ちは、金色の魚を食べれば、この病気がなおるということを聞きますと、絶望のうちにかすかな希望を認めたのであります。金はいくらでもあるから、金の力で、この金色の魚を探しだそうと思ったのであります。
そこで、国中に、
「金色の魚を捕らえてくれたものには、千両のお礼をする。」といいふらしたのであります。
世間の人々は、このうわさを耳にすると大さわぎでありました。そこにもここにも、寄り集まって金色の魚の話をしたのであります。
「金色の魚なんてあるものかい。」と、甲がいいますと、
「それは、あるそうだ。あるとき、女が河で菜っ葉を洗っていると、目の前に金色の魚が浮いて沈んだことがあるそうだ。そればかりでない、昔から、幾人も金色の魚を見たものがあるということだ。」と、乙がいいました。
「五、六年前も、この町のはずれを流れている河で金色の魚を見たものがあるそうだ。」と、丙がいいました。
そこで、金色の魚はかならずしもいないわけではないというので、町の人々はもちろん、村の人々までみな金色の魚を捕らえて金持ちのもとへ持ってゆこうと思わないものはありませんでした。