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きんのうお
金の魚
小川 未明
「面白倶楽部」1921(大正10)年1月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,768 字 · 10 页
そうすれば、とどこおりなく、千両の金が自分一人の手に落ちると考えたからであります。
二人のものは、たがいに顔をにらみあってものもいわずに、一夜、その家の前に立ちあかしました。
けれど、翌日になって、日はいつしか高く上がったけれど、金持ちの帰ってくるけはいはなかったのです。その中に二人のものは腹が減って目がまわってきました。
そんなこととは知らず、金持ちは、南へ南へと旅をつづけていました。
二人のものは、金の魚を殺さないように、大事にして、毎日、昼も夜も、金持ちが帰ってきたら我れ先に金の魚を金持ちに渡そうと思って家の前に待っていました。すると、だれいうとなく、金の魚は、ふなに金箔を塗って河に放したのだということがわかりました。二人はたいへんがっかりして、捕らえた魚を河へ捨ててしまいました。
金持ちは、いつまでたってもきませんでした。そして、あき家になった家はいつしか荒れはててしまいました。広い屋敷には草がしげって、秋になると虫が鳴き、春になるといろいろの花が咲きました。
その後の金持ちの身の上については、だれも知っているものがありませんでした。おそらく、南の方の知らない町をたずねてゆくうちに、どこかで病気が重くなって死んだのだろうということです。