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きんざんそうわ

金山揷話

大鹿 卓

「中央公論」1939(昭和14)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,736 字 · 22 页

青空文庫

それも私の北海道旅行のいわば目的の一つだった。

はじめ私がこの旅行を思い立ったとき、まず脳裡に浮んだのは、旧友森山の事だった。森山は自ら責任者として、オホーツク海の見える辺陲の山奥で創業の事にあたっている筈だった。私はその鉱山へ出かけて、鉱山生活者の今日の現実に触れて来たいと思った。無論小説のうえの必要からだった。森山ならば私のこうした身勝手な要求をも、寛容に受け容れてくれるだろうと思った。だが、お互にしばらく文通も杜絶えていて、私は森山の鉱山の在処を知らなかったので、私や森山とも同窓の土田のところへそれをききに行った。土田は近郊に鉱山機械の工場を持ち、銀座裏の或るビルディングにその事務所を置いていた。同窓達は地方から出京すると、時間の余裕さえあれば土田の事務所へ立ち寄る者が多いので、つまり土田は私達仲間の事情通だった。森山との連絡もとれて、私は一昨日出発の日になって土田へ電話をかけた。すると「僕もいっしょに北海道へ行く事にした。今夜上野駅で待ち合わせよう」という返事だった。私はその無造作な言葉にやや驚かされたが、いずれ何か商用を兼ねての事だろうと簡単に解釈し、それは自分にとってもこのうえもない好都合だと思った。