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きんざんそうわ

金山揷話

大鹿 卓

「中央公論」1939(昭和14)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,736 字 · 22 页

青空文庫

市岡はむろん例の調子だから突っぱね通したろうさ。その日も押問答の末、相手は堪忍しきれなくなって、突然ピストルを出して引金をひいたというんだ。男は自首して出たとかで、その談話記事が新聞に載っていた」

「つまらない事をしたもんだ」

と、私は思わずつぶやいた。私の胸には何か憤ろしいものが湧き上っていた。それが相手の男の野蛮な行為に対する憤りか、市岡が非業の最期を招いた事への憤りなのか、自分にもわからなかった。あるいはもっと潜在的な道義感があって、自分達がこうして余り痛切なかんじもなく、人間の死について語り得る迂闊さへの、自憤だったかもしれない。

「どうせ市岡もたいしたかねは取ってやしない。僅かなことで殺されたりして可哀そうには可哀そうだが、だいたい市岡自身に、そうした不運を招き寄せるような無茶な気風があった。学校を出てから阿弗利加へ探険に行ったりした男だが、平常の所行も、やにわに日本刀を引抜いて振り廻して見せるというふうだったし、酔うとまた酒癖が悪かった。札幌で僕が紹介した料理屋だがね。寝ていて叩いても起きなかったんだね。起きなけりゃア壁を破って入るぞといって、本当に玄関傍の壁をぶち抜いて這入ったそうだが……」