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きんぎょうり
金魚売り
小川 未明
「赤い鳥」1927(昭和2)年6月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,210 字 · 7 页
自分たちをかわいがってくれた、おじいさんの顔はふたたび、見ることはなかったけれど、少年は毎日のように、水の中をのぞいて、餌をくれたり、新しい水をいれてくれたり、しんせつにしてくれたのであります。金魚は、だんだんおじいさんのことを忘れるようになりました。
夏が過ぎ、秋が逝き、冬となり、そしてまた、春がめぐってきました。
ある日のこと、少年は、外にあって、
「金魚やい、金魚やい――。」と、いう呼び声を聞いたのです。
「金魚売りがきた……。」といって、彼は、すぐに、家の外へ飛び出てみました。心のうちで待っていた、去年金魚を買ったおじいさんでありました。
顔を見ると、おじいさんは、にっこり笑いました。
「坊ちゃん、去年の金魚は達者ですか?」と聞きました。おじいさんは、この子供が、弱った金魚を大事に育てようといって、買ったことを忘れなかったのです。
「おじいさん、金魚は、みんなじょうぶで、大きくなりましたよ。」と、少年は答えました。
「どれ、どれ、私に見せてください。」と、いって、おじいさんは、山吹の花の咲いている庭さきへまわって、金魚のはいっている大きな鉢をのぞきました。