轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
10 宇治の茶箱
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,760 字 · 24 页
それを遮るように藤吉は手を振った。
「ま、後から聞きやしょう。死人を前に置いて因果話もぞっとしねえ。それより――おい、彦。」
と、彼は傍に立っている彦兵衛を返り見た。
「お前ちょっとここへ上って、仏を下ろしてくんねえ。御検視が見えるまでぶら下げておくがものもあるめえよ。」
言いながら屍骸の真下にある宇治の茶箱を顎で指した。恐らくこれを台にして死の首途へ上ったらしいその空箱が、この場合そのまますぐ役に立つのであった。
無言のまま彦兵衛は箱の上に立って、両手を綱の結び目へ掛けた。二、三歩後へ退って二人はそれを見上げていた。力を込めているらしいものの、綱はなかなか解けなかった。屍体の両脚を横抱きにして、藤吉は下からそっと持ち上げてやった。死人の顔と摺れ合って、油気のない頭髪が額へかかってくるのをうるさそうにかきのけながら、彦兵衛は不服らしく言った。
「畜生、なんてまた堅えたまを拵えたもんだろう。」
その時だった。
「解けねえか。よし、糸玉の上から切ってしまえ。」
と、藤吉の言葉の終らない内に大きな音を立てて、箱が毀れると、痩せた彦兵衛の身体が火箸のように二人の足許へ転がり落ちた。