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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
02 梅雨に咲く花
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,515 字 · 23 页
二尺近くも延びている草の間から、青竹の切れを探し当てた藤吉は、暫時それで地面の小枝を放心掻き弾いていたが、来る途中彦兵衛から受け取った小さな金物を袂から出して眺め終ると、やがてすたすた庫裏の方へ向って歩き出した。後の二人は、狐につままれたようにその尾に随いた。
と、何事か思い出したように藤吉が勘次へ囁いた。勘次はびっくりして聞き返した。藤吉の眼が嶮しく光った。勘次はそそくさと寺を出外れると、そのまま屋敷町の角へ消えて行った。
四
「不浄仏たあ言い条――。」
薄暗い庫裏の土間へはいると、突然、釘抜藤吉は破鐘のように我鳴り立てた。
「寺社奉行の係合いを懼れてか、それとも真実和尚さんに暗え筋のあってか、ま、なんにしても、縁あらばこそ墓所で旅立った死人を、石垣下へ蹴転がすたあ、あまりな仕打ちじゃごぜえませんか。もし、あっしゃあ八丁堀の藤吉でがす。」
海の底のように寂然としたなかで、藤吉の声だけが筒抜けに響く。はらはらした提灯屋が思わず袖を引いた。
「親分――。」
「まあ、こちとらの方寸にある。」と、藤吉はまた一段と調子を上げて、
「不浄仏たあ言い条――おうっ、無縁寺ですかい? どなたもおいでにならねえんですかい?」