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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
02 梅雨に咲く花
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,515 字 · 23 页
」
と何やら吹込んだ藤吉の魂胆。頷首きながら聞き終った彦兵衛は、
「委細合点承知之助。」
ぶらりと歩き出す。
「屑っ籠は置いてけよ。」
茶化し半分に追いかけてどなる勘次を、
「勘、無駄口叩かずと尾いて来いっ。」
と、藤吉は飛鳥のごとくやにわに随全寺の崩れ石垣を攀登った。遅れじと勘次が続こうとすると、
「親分、親分の前だが、寺内のお手入れだけは見合せて下せえ。寺社奉行の支配へ町方が――。」
町役人の重立が、こう言って同心手付の方へ気を兼ねながら、心配そうに藤吉を見上げた。が、
「花を見る分にゃあ寺内だろうとどこだろうといっこう差支えごぜえますめえ。」
とすまし込んだ藤吉は、木の下へ立って黄色い花を矯めつすがめつ眺めていたが、ぐいと裾を引上ると、浅瀬でも渉る時のような恰好でやたらにそこらじゅうを歩き始めた。気のせいか、雨に洗われた雑草の形が乱れて、黄色い花をつけた小枝が一面に折れ散っている。そこから本堂との間は広くもない墓場になっていて、石塔や卒塔婆の影が樹の間隠れに散見していた。
勘次も提灯崖も、ただ猿真似のようにその黄色い花の咲いている木の廻りを見渡した。