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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控

野村 胡堂

200 死骸の花嫁

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,163 字 · 25 页

青空文庫

。

「此処ですよ」

八五郎は田原屋の横の路地を入って、庭木戸から案内しました。まだ帰りもやらぬ花嫁行列について来た人たちや、当夜招かれた親類たちは、消し残った提灯に三々五々額を集めて、顔見知りの銭形平次に黙礼などを送っております。

「御苦労様で、銭形の親分」

ていねいに挨拶する主人の久兵衛に軽く応えて、平次と八五郎は、花嫁の死骸を担ぎ込んだ次の間を覗きました。

いちおう床の上に横たえた花嫁のお喜美は、角隠しを取って晒布を顔に掛けてありますが、血に塗れた花嫁衣裳もそのまま、祝言の部屋から持って来たらしい燭台の百目蝋燭に左右から晴れがましく照らし出されて、この上もなく残虐で陰惨です。

「銭形の親分か、――この通りだ、よく見て下され、――娘の無念を晴らしたい」

膝行寄ったのは、小鬢に霜を置いた五十前後の武士。花嫁の父、秋山佐仲というのでしょう、恰幅の立派な、眼鼻立ちの整った、物言いの確りした人物です。裃は取りましたが、紋付は血に汚れて、引寄せた一刀にツイ力瘤の入るのも妙に殺気立って見えます。

「五丁目の奎斎先生はいま帰りました。心の臓をえぐっているから即刻息が絶えたことだろうと言う見立てで」