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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控 鬼の面

野村 胡堂

野村胡堂『銭形平次捕物控 鬼の面』。同一底本的分册已合并为一书。收入:銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,082 字 · 257 页

青空文庫

「何がどうしたんだ」

「四人目がやられましたよ」

「四人目?」

「伊豆屋の虎松が、吾妻屋の裏木戸の前で喉笛を切られて、血だらけになって死んでいますよ」

「よし、手を緩めると、飛んでもねえ業をする畜生だ、行こう八」

平次は手早く仕度をすると、十手を腰に、ポンと飛出します。

「あれ、まだ御飯が――」

うろ/\するお静へ、

「すぐ帰って来るよ――味噌汁のさめねえうちに」

本郷三丁目はさして遠い道では無く、簡単に埒をあけてと思った平次も、こればかりは飛んだ見当違いでした。

物をも言わずに、吾妻屋の裏通りへ駆けつけた平次、木戸の前に、引取手もなく筵を掛けてある、虎松の死骸の前へ立止りました。

「親分、飛んだ早い足ですね」

八五郎はフウ/\言いながら追いつくのが精一杯。

「味噌汁の冷えねえうちに、下手人を縛る気で飛んで来たよ――おや、これはひどい」

平次は死骸を見張って居る町役人や、番太の老爺に挨拶して、早速筵をハネのけました。死骸になった虎松は、この時漸く三十二、三、分別も思想も一人前に円熟する筈の年を、薄墨華魁に現を抜かし、伝馬町で歌われた伊豆屋の身上をフイにしてしまって、乞食同様の姿になりながら、一度契った薄墨が忘られず、請出されて人の女房になった後までも、落ぶれ果てた姿で、ウロウロと附き纏って、恥を恥とも思わぬ、不思議な生活