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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(二)八人芸の女
野村 胡堂
野村胡堂『銭形平次捕物控(二)八人芸の女』。同一底本的分册已合并为一书。收入:銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 144,562 字 · 291 页
「ね、お喜多姐さん、なんだってまた幽霊の真似なんかしたんだ。それも一度や二度じゃあるまい、それから聞かして貰おうか」
「…………」
八五郎は少し有頂天でした。こんな大物、しかも若くて美しくて、ピチピチして、江戸中に聞えた獲物を前にして、思わずドッカと坐り込んだものです。懐から出した手が、ツイ長い顎を爪繰ります。
「お前さんは何だい」
お喜多はようやく備えを直しました。単衣の裾を固く合せると、鱗形の帯の端をギュッと引絞ります。
「名乗るほどの者じゃねえ」
「なんだとえ、懐から十手なんか覗かせて、――名乗るほどの者じゃねえ――が聞いて呆れらア。さア、退いておくれ、邪魔だよ」
「お喜多、舌が長えぞ」
「何を言やがる。朝っぱらから人の家へ上がり込んだりしやがって、気色の悪い。帰らないと大きな声を出すよ」
「存分に張り上げてみるがいい。――綾吉殺しの下手人が引かれて行くところだ、町内の衆に見物をさせるか」
お喜多の辛辣な舌に激発されるともなく、八五郎もツイこんな事を言ってしまいました。
「おや、訝しな事を言うね、私が綾吉を殺したとでも――」
お喜多は言葉が詰って、ゴックリ固唾を呑みました。