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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入

野村 胡堂

野村胡堂『銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入』。同一底本的分册已合并为一书。收入:銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、随筆銭形平次。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,230 字 · 280 页

青空文庫

五

「その婆アは殺されているんだ。黙っていろ」

「ヘエ――」

「ところで、親方は酒が好きかえ」

平次は変なことを訊きました。

「ハイ」

それで苦労をしているらしいお美乃は、極り悪そうに俯向くのです。

「酔うと機嫌の悪くなる方かい」

「いえ、そんな事はありません――どっちかというとよく眠る方です」

お美乃の敢然と振り仰ぐ顔。――浅黒い細面の品のよさは、身扮も背景も超越して、なにか冒し難い美しさが輝くのでした。

「仕事の方は?」

「父さんはいつも仕事を自慢ばかりしています」

腕に覚えのある良い職人が、酒と狷介に煩わされて、初老を過ぎて貧乏から脱けきれないみじめさは、平次にもよく解るような気がしました。

六畳の間に据えた仏壇には、先祖の位牌と、死んだ女房の新しい戒名が飾られてあるらしく、貧しいうちにも、何か折目の正しさが、人に迫るものがあるのです。

「親分さん方」

後ろから声を掛けた者があります。

五

「丸木屋の雪之助さんだよ」

喜三郎は平次に引合せました。それは二十七八の若旦那型の華奢な男で、色の白さも、眼の涼しさも、唇の紅さも、――そして言葉の爽やかさも、申分のない男でした。