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きょうかしのぶんしょう
鏡花氏の文章
「学苑」1933(昭和8)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,456 字 · 7 页
』(卵塔場の天女)
『汽車はもう遠くの方で、名物焼蛤の白い煙を夢のように月下に吐いて、真蒼な野路を光って通る。』(歌行燈)なぞ、以下例を挙げれば限りもないが、決して新感覚派の人達に比して遜色ないと思われる。但し、横光氏等の当時の作品には、鏡花氏には見られない、作品全体の(もしくは、その中の一つの情景の)構成それ自らの中の新しさというものがあった。
『父が突然死んで了った。私は海峡を渡るとバナナを四日間たべつづけて、まだ知らぬ街まで出かけて行った。母は、とある街角の三角形の奇怪な硝子張りの家の中で、ひとり、机のようにぼんやりと坐っていた。』「青い大尉」(横光利一)
これは作者の現実を見る眼の相違からくるものであって、文学史的に考えて見て、表現派の洗礼を受けた新感覚派に之が見られ、表現派以前である鏡花氏に之が見られないのは当然のことである。
併しながら、その新感覚派の作家達がわずか数年にして、その奇矯なる表現法を捨てて了った(あるいは、それを使いこなす力がなくなって了った。)に対して、鏡花氏は実に三十年一日の如く、その独自の表現法を固守して益々その精彩を加えてきているのである。