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かいかのおっと

開化の良人

芥川 竜之介

在明治初期的文明展上,偶遇一位神秘子爵,他对一幅铜版画的解读,藏着时代的秘密和个人的故事。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,438 字 · 32 页

青空文庫

いつぞや上野の博物館で、明治初期の文明に関する展覧会が開かれていた時の事である。ある曇った日の午後、私はその展覧会の各室を一々叮嚀に見て歩いて、ようやく当時の版画が陳列されている、最後の一室へはいった時、そこの硝子戸棚の前へ立って、古ぼけた何枚かの銅版画を眺めている一人の紳士が眼にはいった。紳士は背のすらっとした、どこか花車な所のある老人で、折目の正しい黒ずくめの洋服に、上品な山高帽をかぶっていた。私はこの姿を一目見ると、すぐにそれが四五日前に、ある会合の席上で紹介された本多子爵だと云う事に気がついた。が、近づきになって間もない私も、子爵の交際嫌いな性質は、以前からよく承知していたから、咄嗟の間、側へ行って挨拶したものかどうかを決しかねた。すると本多子爵は、私の足音が耳にはいったものと見えて、徐にこちらを振返ったが、やがてその半白な髭に掩われた唇に、ちらりと微笑の影が動くと、心もち山高帽を持ち上げながら、「やあ」と柔しい声で会釈をした。私はかすかな心の寛ぎを感じて、無言のまま、叮嚀にその会釈を返しながら、そっと子爵の側へ歩を移した。

本多子爵は壮年時代の美貌が、まだ暮方の光の如く肉の落ちた顔のどこかに、漂っている種類の人であった。