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かいかのおっと

開化の良人

芥川 竜之介

在明治初期的文明展上,偶遇一位神秘子爵,他对一幅铜版画的解读,藏着时代的秘密和个人的故事。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,438 字 · 32 页

青空文庫

このもう一人の人物が果して三浦の細君だったか、それとも女権論者だったかは、今になってもなお私には解く事の出来ない謎なのです。」

本多子爵はどこからか、大きな絹の手巾を出して、つつましく鼻をかみながら、もう暮色を帯び出した陳列室の中を見廻して、静にまた話を続け始めた。

「もっともこの問題はいずれにせよ、とにかく珍竹林主人から聞いた話だけは、三浦の身にとって三考にも四考にも価する事ですから、私はその翌日すぐに手紙をやって、保養がてら約束の釣に出たいと思う日を知らせました。するとすぐに折り返して、三浦から返事が届きましたが、見るとその日は丁度十六夜だから、釣よりも月見旁、日の暮から大川へ舟を出そうと云うのです。勿論私にしても格別釣に執着があった訳でもありませんから、早速彼の発議に同意して、当日は兼ねての約束通り柳橋の舟宿で落合ってから、まだ月の出ない中に、猪牙舟で大川へ漕ぎ出しました。

「あの頃の大川の夕景色は、たとい昔の風流には及ばなかったかも知れませんが、それでもなお、どこか浮世絵じみた美しさが残っていたものです。現にその日も万八の下を大川筋へ出て見ますと、大きく墨をなすったような両国橋の欄干が、仲秋のかすかな夕明りを揺かしている川波の空に、一反り反った一文字を黒々とひき渡して、その上を通る車馬の影が、早くも