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とうそう
闘争
小酒井 不木
「新青年」1929(昭和4)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,079 字 · 38 页
して見ると、北沢は、ある人のために無意識に書かされ、そうして暗示を与えられたと考えねばならなくなった。
「こうして、僕の推理の中にはじめて第三者がはいって来たよ。つまり、北沢事件に、今迄ちっとも顔を出さなかった人が顔を出すに至ったのだ。そうして、その第三者こそ僕に北沢の投書と遺書とを詮索させようとしたのであって、その人が、今まで北沢が行ったとして話して来た計画をこと/″\く立てたわけである。そうして、北沢自身はそれについて少しも知らなかったのだ。
「涌井君。その第三者とはそも/\誰だろう。先ず他人の遺書の文句をうつした遺書を書かせて、死骸を埋葬させ、然る後、同一筆蹟の投書を警察へ送って再鑑定を行わせ、自殺であることを確証せしめて、たゞ僕のみがその投書を見て事件の謎をつきとめるために努力することを予想して居た人は誰であろうか。何のためにその人は僕に徹夜せしめるような苦心をさせたか。
「涌井君。君はもう、それが誰であるかをおぼろげながら察し得たであろう。けれども、その人であると断定すべき証拠が一たい何処にあるのか、その時僕は考えたのだ。これほどまでの計画を立てる人のことであるから、必ずその証拠となるべきものが、どこかにこしらえてあるにちがいないと想像したのだ。