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いんてんにほんがしょかん
院展日本画所感
和辻 哲郎
「中央美術」1919(大正8)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,096 字 · 10 页
柔らかで細かい、静かで淡い全体の調子も、この動機を力強く生かせている。
このような淡い繊弱な画が、強烈な刺激を好む近代人の心にどうして響くか、と人は問うであろう。しかしその答えはめんどうでない。極度に敏感になった心には、微かな濃淡も強すぎるほどに響くのである、一方でワグナアの音楽が栄えながら他方でメエテルリンクの劇が人心をひきつけた事実は、今なお人の記憶に新しいであろう。静かな、聞こえるか聞こえないほどの声で、たましいの言葉を直接に語り出させようとするような、あのメエテルリンクの芝居が、耳を聾するようなワグナアの音楽にも劣らず人心を動かしたのは何ゆえであるか。それを知るものはただ調子の弱さをもってこの画を責むべきでない。
この画で問題になるのは、それが写生でありながら実は写実でない事である。といって自分は、この画に塗り残されたところが多いことをさすのではない。塗り残された未完成の画の示唆的なおもしろさ、それを巧妙に生かすのは日本画の伝統の著しい特徴であった。そこには多くの想像の余地が残される。不幸にもそれは堕落してごまかしの伝統を造ったが、それ自身には堕落した手法とは言えない。