轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
かいだん
階段
海野 十三
「新青年」博文館、1930(昭和5)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,588 字 · 32 页
僕の五感は針のように鋭敏になって一瞬のうちにありとあらゆるところを吸取紙のように吸いとってしまった。
ふくら脛のすこし上のところに、まだ一度も陽の光に当ったことがないようなむっつり白い肉塊があって、象牙に彫りきざんだような可愛い筋が二三本匍っていた。だがその上を一寸ばかりあがった膝頭の裏側をすこし内股の方へ廻ったと思われるところに、紫とも藍ともつかない記号のようなものがチラリと見えたのは何であろう。見極めようとした途端に、ひとでのような彼女の五本の指が降りて来て僕の視線の侵入するのを妨げてしまった。僕は何故か階段に踏み止った婦人の心を読むために、はじめて眼をあげて彼女の顔をみあげた。おお、これは又、なんという麗人であろう。花心のような唇、豊かな頬、かすかに上気した眼のふち、そのパッチリしたうるおいのある彼女の両の眼は、階段のはるか下の方に向いていて動かない。その眼には、なにか激しい感情を語っている光がある。で、私は彼女の眸についてその行方を探ってみた。だがそこには長身の友江田先生の外になにものも見当らなかった。僕はしばらく尚も遠方へ眼をやったが矢張り何者もうつらなかった。