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ずいひつなん

随筆難

寺田 寅彦

「経済往来」1935(昭和10)年6月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,381 字 · 9 页

青空文庫

しかし人間の両眼が耳の近所についていない限り、いくらこういう実験をしてみたところで自分の疑問は解けそうもない。

この端書をよこした人も医者だそうである。以上の外にもこれまで自分の書いたものについて色々の面白いことを知らせてくれた人には医師が一番多いようである。やはり職掌柄で随筆を読むにも診察的な気持があるせいであろうが、とにかくこういう読者は自分などの書くような随筆にとっては一番理想的な読者であろうと思われる。それだから自分も患者の気持になってちょっとだだをこねてみた次第である。

上記のごとき自由な気持で読んでくれる読者とちがって自分の一番恐縮するのは小中学の先生で、教科書に採録された拙文に関して詳細な説明を求められる方々である。

「常山の花」と題する小品の中にある「相撲取草」とは邦語の学名で何に当るかという質問を受けて困ってしまって同郷の牧野富太郎博士の教えを乞うてはじめてそれが「メヒシバ」だということを知った。その後の同様な質問に対しては、さもさも昔から知っていたような顔をして返答することが出来た。ところがある地方の小学校の先生で、この「相撲取草」