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ずいひつなん

随筆難

寺田 寅彦

「経済往来」1935(昭和10)年6月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,381 字 · 9 页

青空文庫

「のろい振動の長い週期」を略して「帝展」「震研」流に云ったものと思えば不思議はないのである。従って、「速度のはやい」なども実感を強めるための俗語として「速度の大なるすなわち運動の速い」の略語として通用を許してもそれがために物理学は何の損害をも受ける心配はないかと思われる。それで、負惜しみのようではあるが、物理学を専攻する人間でも、座談や随筆の中ではいくらか自由な用語の選択を寛容してもらいたいと思うのである。

この抗議のはがきの差出人は某病院外科医員花輪盛としてあった。この姓名は臨時にこしらえたものらしい。

この三月にはまた次のような端書が来た。

「始めて貴下の随筆『柿の種』を見初めまして今32頁の鳥や魚の眼の処へ来ました、何でもない事です。試みに御自分の両眼の間に新聞紙を拡げて前に突き出して左右の眼で外界を御覧になると御疑問が解決せられるのです。御試みありたし、(下略)」

魚や鳥のように人間の両眼の視界がそれぞれに身体の左右の側の前後に拡がっていたとしたら吾人の空間観がどんなものになるかちょっと想像することが六ヶしいという意味のことを書いたのに対して、こういう実験をすすめられたのである。