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めすについて

雌に就いて

太宰 治

「若草」1936(昭和11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,994 字 · 11 页

青空文庫

客人は、二十七八歳の、弱い側妻を求めていた。向島の一隅の、しもたやの二階を借りて住まっていて、五歳のててなし児とふたりきりのくらしである。かれは、川開きの花火の夜、そこへ遊びに行き、その五歳の娘に絵をかいてやるのだ。まんまるいまるをかいて、それを真黄いろのクレオンでもって、ていねいに塗りつぶし、満月だよ、と教えてやる。女は、幽かな水色の、タオルの寝巻を着て、藤の花模様の伊達巻をしめる。客人は、それを語ってから、こんどは、私の女の問いただした。問われるがままに、私も語った。

「ちりめんは御免だ。不潔でもあるし、それに、だらしがなくていけない。僕たちは、どうも意気ではないのでねえ。」

「パジャマかね?」

「いっそう御免だ。着ても着なくても、おなじじゃないか。上衣だけなら漫画ものだ。」

「それでは、やはり、タオルの類かね?」

「いや、洗いたての、男の浴衣だ。荒い棒縞で、帯は、おなじ布地の細紐。柔道着のように、前結びだ。あの、宿屋の浴衣だな。あんなのがいいのだ。すこし、少年を感じさせるような、そんな女がいいのかしら。」

「わかったよ。君は、疲れている疲れていると言いながら、ひどく派手なんだね。