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めすについて

雌に就いて

太宰 治

「若草」1936(昭和11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,994 字 · 11 页

青空文庫

いちばん華やかな祭礼はお葬いだというのと同じような意味で、君は、ずいぶん好色なところをねらっているのだよ。髪は?」

「日本髪は、いやだ。油くさくて、もてあます。かたちも、たいへんグロテスクだ。」

「それ見ろ。無雑作の洋髪なんかが、いいのだろう? 女優だね。むかしの帝劇専属の女優なんかがいいのだよ。」

「ちがうね。女優は、けちな名前を惜しがっているから、いやだ。」

「茶化しちゃいけない。まじめな話なんだよ。」

「そうさ。僕も遊戯だとは思っていない。愛することは、いのちがけだよ。甘いとは思わない。」

「どうも判らん。リアリズムで行こう。旅でもしてみるかね。さまざまに、女をうごかしてみると、案外はっきり判って来るかもしれない。」

「ところが、あんまりうごかない人なのだ。ねむっているような女だ。」

「君は、てれるからいけない。こうなったら、厳粛に語るよりほかに方法がないのだ。まず、その女に、君の好みの、宿屋の浴衣を着せてみようじゃないか。」

「それじゃ、いっそのこと、東京駅からやってみようか。」

「よし、よし。まず、東京駅に落ち合う約束をする。」

「その前夜に、旅に出ようとそれだけ言うと、ええ、とうなずく。