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めすについて

雌に就いて

太宰 治

「若草」1936(昭和11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,994 字 · 11 页

青空文庫

午後の二時に東京駅で待っているよ、と言うと、また、ええとうなずく。それだけの約束だね。」

「待て、待て。それは、なんだい。女流作家かね?」

「いや、女流作家はだめだ。僕は女流作家には評判が悪いのだ、どうもねえ。少し生活に疲れた女画家。お金持の女の画かきがあるようじゃないか。」

「同じことさ。」

「そうかね。それじゃ、やっぱり芸者ということになるかねえ。とにかく、男におどろかなくなっている女ならいいわけだ。」

「その旅行の前にも関係があるのかね?」

「あるような、ないような。よしんば、あったとしても、記憶が夢みたいに、おぼつかない。一年に、三度より多くは逢わない。」

「旅は、どこにするか。」

「東京から、二三時間で行けるところだね。山の温泉がいい。」

「あまりはしゃぐなよ。女は、まだ東京駅にさえ来ていない。」

「そのまえの日に、うそのような約束をして、まさかと思いながら、それでもひょっとしたらというような、たよりない気持で、東京駅へ行ってみる。来ていない。それじゃ、ひとりで旅行しようと思って、それでも、最後の五分まで、待ってみる。」

「荷物は?」

「小型のトランクひとつ。