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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
――そう思うとうきうきしてきた。彼はまことしやかにいうのだった。
「中野にきょうあたりこいといったからな。こいという日にいっとかんと、わるいもんなあ。」
「なにが悪いもんか。借金にくる人間をまってる人はありませんよ。それがほんとなら、一筆かいて、二三子にもたしてやればいい。」
だが彼は、おせいや二三子に中野へゆかれるのは困る。つくろいつくろっているさまざまなうその皮が、みんなはがされそうでいやなのだ。安江たちにそれを見ぬかれているならいるでやはりいやだった。兵六さんのそんな都合のよい考えとは別に、二三子は二三子の考えで、両親の得手勝手をはねつけた。
「ごめんだわ、借金のつかいなんて。第一わたしはあの小説かきのおばさん、だーいきらい。感じが悪いったらありゃしない。えらそうな顔して、いつだって、なんかかぎ出そうとしてるみたいよ気持のわるい……」
とはいうものの二三子は、子供の時以来、最近ではたった一度しか安江にあっていない。そのたった一度の出あいが、三日も家に帰らぬ父をさがしにゆき、しかもゆきちがいに父が帰ったあとだったために、なりゆき上いいたくない事情も打ちあける結果になってしまったのだ。