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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
――あの人、少しこれですね……。
浜子のいった無遠慮な言葉が、はっと安江の胸にきた。女房や子供に出てゆけといわれて出てきた人にしては、あまりになごやかすぎるではないか。
「桃だけ買うつもりでしたらな、柳までがあってな、すっかり小豆島の節句を思い出してな、夏樹さんに話したら、それならそれでいこうという相談になってな――」
いいわけがましいところから察しると、これはお互いの勘ちがいではなく、どうやら兵六さんの方が計画的らしい。どんなつもりでいるのか、兵六さんはしきりと夏樹を相手に命令を発している。
「竹がいるんだがな、竹が。――夏樹ちゃん、竹あるかい竹。四つ目垣つくった余りのようなのでいいんだがね。細いのでいいよ、細いのでな。」
「うん、あるよ。」
「それとね、ノコがあるかい、ノコ。ノコギリだよ、ノコギリ。」
「あるよ。」
「キリもいるね、キリ。穴あけるやつだよ、穴をね。」
「わかったよ兵六さん、キリぐらいあるよ、キリぐらいは。ね、おかあちゃん。」
兵六さんのそのくせのある妙ないい方に気づいてさっそくまねをする夏樹に、安江は笑顔ができなかった。子供の夏樹にまでもうつけこまれている兵六さんの人のよさが気の毒になったのだ。