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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

「客がとれないんだそうだ。銀座あたりじゃあね。」

「そうでしょう。やっぱり、東京なら銀座と考えたあたりは、いなかの詩人なのね。そんなら場末でもいいじゃないの。」

「ところがそいつもだめなんだそうだ。そこにもあんまがうようよしてるんだってさ。しかし、それよりもね、第一居場所がないんだってさ。たよってきた友人にもことわられてね。――おれは田舎へ帰れっていったんだがね、背水の陣をしいて田舎の家も売り払って上京したんだっていうんだがね。」

「馬鹿ね、その金、部屋もかりずにうざうざと使っちゃったの。」

「そうだってさ。東京を甘くみてたんだな。毎日二三人の客がつけばいいってね。そいつがまだ上京以来ひとりもつかないそうだ。」

「詩どころじゃないわね。」

「そうなんだよ。そこで決心して棺おけを作るなんていってるんだよ。」

「ええっ。棺おけって、あの棺おけ?」

「ああ、あの棺おけさ。」

と、文吉は安江のおどろきを一そうあおるようなまじめな顔をする。そうなると安江はもうおどろかない。音枝の方が代って、

「棺おけ作るって、葬儀やになるの。」

文吉はあっはっはと笑い、

「住居なんだよ、棺おけがな。