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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

彼、さとったんだそうだ。要するに人間、五尺のからだの置きどころはつまるところ棺おけじゃないかとな。そこで、生きてる内に棺おけを住居ときめてさ、それに車つけて引っぱって歩くんだそうだ。持ち物一さい入れてね。夜はその中にはいって寝る。まいまいつぶろと同じさね。まいまいつぶろをみて思いついたんだそうだ。移動住宅だよな。広い東京至るところわが家だって、うれしそうにいってたよ。その夢が実現すれば詩が書けるって。」

「詩人の夢。」

「ああ、うらやましかったねおとうさんも。死ねばそのまま火葬場へもってってもらう……」

音枝がぷうっとふき出すと、安江はいやな顔をして、

「笑いどころじゃないよ。若い者が棺おけを思いつくなんて。まいまいつぶろをみれば、もっと別のことも思いつきそうなもんだがね、まったく――」

それから三日ほどおいて詩人が三度目にやってきたとき、文吉は困った顔で音枝のそばへきて、小声でいった。

「金、あるかね。」

「いくら。」

「二千円ていうんだけど、千円でもいいよ。」

「あるわ。」

がま口をさし出すと、文吉はその中から千五百円をぬき出し、

「しょうがないよ。今夜鳥取へ帰るっていうからね。