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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
」
そらきた! と音枝は伸子の手をとめて聞き耳を立てた。学生アルバイトらしい若い声だ。いろんなものをならべ立てているらしく、品物と値段をいうたびに、浜子の声が、
――まにあってます。――それもまにあってますわ。――みーんなまにあってますわ――うそだと思うなら、みせましょうか。ゴムヒモなんて、売りたいぐらいよ――
第一客はそれで成功した。浜子はいい気もちそうに、
「おねえさん、いい文句があるじゃないの。まにあってます。――なーんて便利な言葉でしょう。まにあってまあす――これで間にあわせるのよ。」
音枝の伸子かいを手つだいながら浜子はころころと笑う。
若い女の笑い声にさそわれでもしたように、庭の切戸を押してひとりの老婆がはいってきた。
「こんにちは、奥さん。」
「はい、なんですか。」
浜子が奥さんになって相手をする。
「あのう、おぼしめしで、いかがでしょうね。」
さすがの浜子もちょっと戸まどいして、
「おぼしめし? それ、なんですの。」
老婆は歯のない口もとをかた手でかくし、ほっほっと笑い、
「ね、わたしが歌いますからね、奥さんがおぼしめしをくださるのよ。」
「あ、おぼしめしって、歌ですか。