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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

そんならまにあってますわ。」

「そうですか。ほっほっほ。」

老婆はまたかわいらしく笑って、あっさりと引揚げた。音枝はその場にしゃがみこんで笑った。浜子はますますいい気になり、

「ほら、ね。」

音枝がはけをもち、浜子はのりおけをもって、お互いにきげんのよい時をすごしていると、

「こんちわあ。」

また切戸があく。老人だ。

「奥さん、きんかくしの掃除はいかがですか。安くしとくがね。」

「まにあってまあす。」

浜子が調子づいていうと、

「え、なんだって!」

少々気色ばんだのをみると、浜子は少し調子をさげて、

「まにあってるのよ、おじさん。第一、そんなもの、ないのよ、うち。」

これにはさすがの老人も笑い出し、

「ほんとかねお嬢さん、あさがおのないうちはあっても、きんかくしのないうちはないよ。」

「そうお。ところがうちにはないのよ。ねええおねえさん。」

浜子はそれをまじめくさっていう。

「じゃあ、おとなりへ借りにいくのかね。」

「ええ、近所同士ですもの、何でも貸したり借りたりよ。――おじさんさっきの歌うたうおばさんと夫婦なの。」

音枝はもうたまりかねて、すぐそばのハギのしげみにかくれ、思いきり忍び笑った。