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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

肩だのおしりだの腰なんかにこうやくをべたべたはりつけてさ、はだかの女性たちの前で問答するの。『××こうって本当によくききますわね。』『まったく、これを使い出すとやめられませんわ。』『それにはったままおふろにはいれるんですもの便利ですワ。』そして湯にはつからず次のふろやへ――」

浜子はそれをこわ色をつかっていったので、みんなふき出した。安江がひとりむつかしい顔をしていた。その複雑な表情を音枝は忘れることができない。――

とうとう一時が鳴った。それがきこえたらしく安江の部屋のふすまがあき、

「おとうさん、おそいね。もうおやすみ。」

浜子のことは知らぬらしくやさしい声だ。気づかれずに帰ってくればよいがと思ったとたん、はげしくブザーが鳴った。やけっぱちな鳴らし方は浜子かもしれぬと思うと、おこった表情が自然と顔に現われて、音枝はいつものようにガラス戸もあけずに、だまって玄関に立っていた。文吉が走ってきて、

「五百円、大至急だ。こまかいのがあれば四百八十円でもいい。」

待たしてあるタクシーのほうへかけてゆく足音を聞きながら音枝はほっとし、ほとんど同時に、浜子は? と気づかうその瞬時の思いの中で、浜子が家にきて以来、家庭の空気がかき乱されがちなことについて、考えていた。