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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

「ただいまあ。」

浜子はすぐ目をほそめ、

「なんだ冬坊か。」

はしをおいたところへ、ある期待ではいってきたらしい冬太郎は、浜子とみるとまるで血相をかえて身をひいた。

「いいじゃないか、冬坊。いくら冬坊でも、そうあわてて逃亡しなくてもいいわよオ。」

「不潔だよう。」

どなるほどでもない大声でいって、冬太郎の足音はもう二階の段ばしごに、若さをほこるような音を立てていた。

「いったな。不潔だって。――無邪気だね彼は。だから好きなんだわたしは。誘惑を試みたけど、このうちの男性中では一ばん堅固だったわよ、おねえさん――」

くるりと背をむけて、ざあざあ水道を出しっぱなしで茶わんを洗う浜子に、音枝はきっとした声で、

「よしてよ浜ちゃん。あんた、へんよこのごろ。」

「そうよ。ワタシコノゴロヘンナノヨって歌があったんだってね。それよ。」

くるっと顔だけふりむけてぺろっと舌を出す。

「冗談にもほどがあるわ。冬太郎はまだ子供なんですからね。おとうさんとは――」

わけがちがうといおうとして恥じてあわてて口をつぐんだ音枝の気も察しずに浜子は、わざとらしく、

「と、おうちの方は信じてらっしゃいますがね、冬坊にはもうちゃんとガール・フレンドがいますからね。