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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
「半額ですって。ほんとならほしいんだけど、今お金ないのよ。だって、ほうき、高いんだもん。」
「高くありませんよ。市価の半額なんですからね。まあ見るだけ見てくださいよ。」
「だめよ。見たらほしくなるもの。それでも貸してはくれないでしょ。」
「お貸ししますよ。金がないのはお互さまだあ。三日や五日なら貸しますよ。」
「ほんと。夜逃げしたらどうする。」
「夜逃げ? 大丈夫だよ。富山の薬屋に知りあいがいるんでね、草の根分けてもさがし出してくれるから。」
こうなったらしめたものだ。冗談でねばっていれば大てい買ってくれる。とはいえこれとてそうたやすいことではない。三河屋の見当通り三本売れたら上々で、いい加減くたびれた。それでも売れさえすれば、ほうきの重たさだけ気は軽くなる。
こうして一日おきの五日がかりで七本まで売りさばいた時、兵六さんはほとほとほうき屋がいやになった。くたびれが商いの意欲を失わせかけたのかもしれない。同じことをいって歩くのもあきあきしたし、新しい販路を開いてゆくのも大儀だ。もう自分の力の限りをつくしたような気がする。たとえくたびれもうけになっても、今度こそ残りのほうきは半値でたたき売ってきれいさっぱりしようか――などと考えながら、小さな流れのそばの橋のたもとで一ぷくつけた。