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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
「夜、九時すぎたら夏樹がねるわ。そしたら迎えにいくわね。」
すると浜子は遠慮して、
「大丈夫、ひとりで帰れるわ。」
「でも、ひとりじゃあ無理だってよ。おとなりの奥さんでさえ――」
旦那さんが迎えにいく――といいそうになったのをのみこんで、
「ひとりじゃ帰れないのよ。麻酔がさめきらないからふらふらだってよ。だから、わたしがいくまでまっててね。こんなことって、何でもなさそうでも、ほんとは大変なんだってよ。」
「いいわよ。そんなとこまでおねえさんにやってこられるのいやだ。」
それを浜子のわがままや得手勝手とばかりにもとれず、それならばと音枝は一日入院の費用をもたせたのである。それもお隣りの奥さんの嘆きから得た知識である。七つをかしらに三人の子持であるとなりの奥さんは、ここのところ毎年、もしかしたら一年に二回も産児制限をしている。それがいつもおしゅうとめさんに内しょなのだ。時にはその費用のねん出に困って、安江のところへかりにきたこともある。そんなことで音枝までが事情を知っていた。子供が三人もあれば、主婦は一夜を病院のベッドでゆっくりと休むことさえできないし、おまけにしゅうとめに内しょとなると、苦労も一通りではない。