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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

――もののわかったしゅうとめなんですけどね、それでも嫁となれば、何かしら遠慮なんですよ。バカな話ですけどね。でも、ぽかっと一度に三千円出てゆくなんて、うちの支出ではほかにありませんもの。これがあったら子供の洋服でも靴でも買ってやれるのにと思うと、わたしひとりがぜいたくしてるようで、つい三度の二度は内しょにしますの。――

だからそんなときお隣りの奥さんは口実に苦労する。会社の連中と一しょの奥様同伴の日帰り旅行だといって出かけて、夜おそく貧血をおこしたといってごまかしたりせねばならないのだった。

――女って、どこまでかわいそうにできてるんだろうね、まったく……

安江がそういってためいきをしたこともあった。その安江にさえも、浜子のこととなると、音枝はうちあけられないでいる。浜子がどんな顔をして帰ってくるだろうと思うと、そんなあとの隣りの奥さんのあおい顔色を思い出し、音枝は気が気でなかった。

二日たった。浜子はまだもどってこない。用たしのような顔をして出かけようとする音枝に、安江はきげんよく、

「浜ちゃんは?」

「出かけたわ。」

「そう。よく仕事があるね。いいかげんで音をあげるかと思ったけど、ま、あれはあれでいいよ。