轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
そしてその感覚の余波に酔ってうっとりとなり、やがて起きあがった時、浜子のかたわらに男はもういなかった。はっと思わぬでもなかったが、後悔する気は全然なかった。心の奥の方に、あいこじゃないか。とささやく声があった。浜子は勝気に笑おうとした。さすがに笑えはしなかったが、苦々しいこととは思えなかった。さっきまで楽しかった気持のきりかえが、そう急にはできなかったのかもしれぬ。時がたってもその考えは大して変わらなかった。ある日の思い出として、だれにもいわずに、心の奥にしまっておくつもりだったのに、あいこのはずのそのたわむれが、瞬間の享楽の責任を女にだけおわしたのだ。あいこではなかった。浜子ははじめてあわて出し、あらゆる手さぐりの知識を総動員して、責任の不平等をくみ伏せようとあせった。だれもいない時、二階の階段を五段ほどとんでみた。行水をつかうふりして、水のたらいに腰をつけてもみた。心を卑しくして、進君と結ぼうとした。働いていると見せかけて、終日を山手線の電車にのってもみた。みんなだめだった。
そんないやらしい過去の一さいが、きょうはぬぐわれるのだと思って床次医院のドアを押したのだが、五六人いた先客の患者にならって、殊勝な顔つきで、診察室へはいっていったとき、もうすでに、彼女の神経は対抗的になりかかっていた。