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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

」

「うん、やるよ。そしたらこんどはおねえちゃんはおとなの自転車だよ。」

日曜日の朝など四輪車と自転車は家のまわりをぐるぐるまわる。冬太郎が一生けんめいになって、ちょこちょこと忙しくペダルをふむあとから、音枝はゆうゆうとついてゆく。そして冬太郎を誘うように歌いだす。

あれ あれ なんでしょね

冬太郎が幼稚園で習ってきた歌だ。冬太郎は自慢の大声で、

お顔 お顔 なでている

おかんか おかんか さすってる

ああ 風さんね

聞きながら文吉が安江にとう。

「おかんかって何のこったろう。」

「髪ですよ。」

「いやったらしいね。わざわざ甘ったれにしてるようなもんだね。」

「そうよ。冬太郎が歌うとよけいおかしいわよ。」

しかし夫婦はある幸福感にひたっている。

「大きくなったわね。子供なんて、だまっててもそだってくれるんだからありがたいわ。」

「へっ。つらいつらいと後悔ばっかりしてるくせに。」

「でも、あんなのみてると忘れちゃう。――子育てが苦労などとはつゆ思うまじくそうろうだわ。わたしたちってやっぱりお人よしかしらん。」

「そうだよ。だからふたりもおっつけられたんだよ。」

「でも、子供らのためにはふたりになってよかったと思わない?」