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ざつぶんひとたば
雑文一束
平林 初之輔
「探偵趣味 第二年第四号」1926(大正15)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,337 字 · 3 页
私は師範学校にいた頃、六円の小為替(その時分は三円ずつ二枚になっていた)を一級下の生徒に盗まれたことがある。はじめはまるで見当もつかず、その男は私と話したこともない人間だったので困ったが、私は舎監にも届け出ず、ひとりでとうとう犯人を見つけて白状さしたことがある。この舎監に届け出なかったということは、私のこの世でなした善行の筆頭に位するものである。なぜなら、この小さな盗みが公にされてから犯人がわかったら、その男は、鉄拳と冷水とで半殺しの制裁を仲間から受け、その上で退校させられて一生を棒にふるからだ。例の男はいまだに無事に小学校の先生をしているだろうと思うとちょっと愉快である。