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ざっき(に)
雑記(Ⅱ)
寺田 寅彦
「中央公論」1924(大正13)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,640 字 · 14 页
その長短がいろいろの偶然的なコンビネーションで起るのが先ず面白かった。それから五つの煙の塊が空中に描く屈曲した線が色々の星座のような形をして、またそれが垂直に近くなったり、水平に近く出たり、あるいは色々な角度に傾斜するのも面白かった。それらの塊が風に流されて行く間にだんだん相対的位置を変えて行くのが、上層の風の構造を示すものとして、特別な興味があった。かつて誰かが、ある関東の山の上で花火を上げて、高層気象の観測をやろうという提案をした事を思い出して、なるほどこれならば存外ものになりそうだと思いながら見ていた。
なお面白いのは一つ一つの煙の団塊の変形である。これがみな複雑な渦動の団塊であって、六かしい運動を続けながら、だんだんに拡散して行くのである。昨年九月一日被服廠跡で起った火焔の渦巻を支配したと同じ方則がここにも支配しているのだろうと思って、一生懸命に眺めていたが、この模糊とした煙の中から、そう手取早く要領を得た方則を読取る事は容易な仕事ではないのであった。
五回に一回くらいは風船に旗を吊したものや、相撲や兵隊などの人形の出るのがあった。人形がゆらりゆらり御叩頭をしたり、挙げた両手をぶらぶらさせながら、緩やかに廻転しながら下りて行くのは、ちょっと滑稽な感じのするものである。