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ざっき(に)

雑記(Ⅱ)

寺田 寅彦

「中央公論」1924(大正13)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,640 字 · 14 页

青空文庫

それが向う河岸の役所の構内へ落ちそうになると、そこの崖で見ていた中年の紳士の一人は急いで駆け出して行って、建物の向うに消えた。まさかあれを取るためにああ急いで駆けて行ったのでもあるまいが。

そのうちに一つ、いつもとはちがって円筒形をした玉を込めているので、今度は何か変ったものが出るだろうと注意して見ていた。打ち上げられた円筒は、迅速に旋転しながら昇って行ったが、開いたのを見ると、それは夜の花火によくあるような、傘形にあるいはしだれ柳のように空に天蓋を拡げるのであった。これについて一つ不審に思った事は、あれがどうしていつでも傘のように垂直線のまわりに対称的に拡がるかという事である。なんでもない事のように思っていたが、考えてみると、これはそう簡単な問題ではなさそうである。あの円筒形がその筒の軸と直角な軸の周囲に廻転しながら昇るという事と関係があるらしいとは思うが、本当の事は鍵屋の職人にでもよく聞いてみた上でなければ判断が出来ない訳である。昔始めてこの花火を発明した人は偶然かもしれないが、やっぱり、少しはえらい人だったろうという気がした。

いちばん大きな筒の順番はなかなか廻って来なかった。