轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

おしゃく

雛妓

岡本 かの子

「日本評論」1939(昭和14)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,482 字 · 53 页

青空文庫

わたしがあのお子さんにお仰しゃったら幾らでもじかに書いて下さいましょうにと申しましたら、いや、俺はあの娘には何にも言えない。あの娘がひとりであれだけになったのだから、この家のことは何一つ頼めない。ただ、蔭で有難いと思っているだけで充分だ」と洩したそうである。

こんな事柄さえ次々に想い出されて来た。食品を運んで来る女中は、わたくしたち中年前後の夫妻が何か内輪揉めで愁歎場を演じてるとでも思ったのか、なるべくわたくしに眼をつけないようにして襖からの出入りの足を急いだ。

七時のときの鐘よりは八時の鐘は、わたくしの耳に慣れて来た。いまは耳に手を当てるまでもなく静に聞き過された。一枚開けた障子の隙から、漆のような黒い水に、枯れ蓮の茎や葉が一層くろぐろと水面に伏さっているのが窺かれる。その起伏のさまは、伊香保の湯宿の高い裏欄干から上つ毛野、下つ毛野に蟠る連山の頂上を眺め渡すようだった。そのはろばろと眺め渡して行く起伏の末になると、枯蓮の枯葉は少くなり、ただ撓み曲った茎だけが、水上の形さながらに水面に落す影もろとも、いろいろに歪みを見せたOの字の姿を池に並べ重ねている。