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あめ
雨
織田 作之助
「海風 第四巻二号」1938(昭和13)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,421 字 · 60 页
また自分でもしば/\そのことを顧る必要があった。クラスの者は彼に「首席」という綽名をつけた。いわば、首席の貫禄がないのだった。黙って居ればよかったのである。彼等はいくら頑張っても彼に追いついて行けないと分っていても、余り彼が自分に箔をつけたがるので、しまいにはそれをメッキだと思いこんでしまった。点取虫だといわれて、初めてはっと気が付くと、豹一はもう首席という綽名に芸もなくやに下って居られなくなり、自分が余り勉強もせずに首席になれたことを思いこませようとして、試験の前日には必ず新世界の第一朝日劇場に出掛けてマキノ映画を見、試験の日にそのプログラムの紙をもって来て見せるのだった。そんな彼に、最初彼の中に自信の無さから来るどこか謙遜めいたものを見ていた者も、嫌応なしに傲慢だと思わされてしまった。彼はクラスの者に憎まれた。しかし、彼の敵愾心は、クラスの者を最初から敵ときめていたから、憎まれて、かえってさば/\と落つく風であり、彼の美貌に眼をつけた上級の荒男が無気味な媚で近づいて来るのを見ると、かえってその愛情に報いる方法を知らぬ奇妙な困惑に陥るのだった。