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あめしょうしょう
雨瀟瀟・雪解 他七篇
永井 荷風
永井荷風『雨瀟瀟・雪解 他七篇』。同一底本的分册已合并为一书。收入:雨瀟瀟、雪解、榎物語、監獄署の裏、散柳窓夕栄、寐顔、ひかげの花、勲章。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,414 字 · 289 页
八
の爪先に煙管をぽんとはたき、
「では先生、早速あの突当りの菜飯茶屋なぞはいかがで御座いましょう。山東翁が『近世奇跡考』に書きました金竜山奈良茶の昔はいかがか存じませんが、近頃は奥山の奈良茶もなかなかこったものを食わせやす。それに先生御案内でも御座いましょうが、お座敷から向う一面に裏田圃を見晴す景色はまた格別で御座いますよ。丁度今頃は田圃に蓮の花が咲いておりましょう。」
八
一同は早速水茶屋の床几をはなれ、ここにも生茂る老樹のかげに風流な柴垣を結廻らした菜飯茶屋の柴折門をくぐった。なるほど門人種員の話した通り打水清き飛石づたい、日を避ける夕顔棚からは大きな糸瓜の三つ四つもぶら下っている中庭を隔てて、茶がかった離れの小座敷へと通るや否や明放した濡縁の障子から一目に見渡した裏田圃の景色。これは全く格別の趣きである。これは即ち南宗北宗より土佐住吉四条円山の諸派にも顧みられず僅に下品極まる町絵師が版下絵の材料にしかなり得なかった特種の景色である。狂歌川柳の俗気を愛する放蕩背倫の遊民にのみいうべからざる興趣を催させる特種の景色である。即ち左手には田町あたりに立続く編笠茶屋と覚しい低い人家の屋根を限りとし、右手は遥に金杉から谷中飛鳥山の方へとつづく深い木立を境にして、目の届くかぎり浅草の裏田圃は一面に稲葉の海を漲らしている