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あめしょうしょう
雨瀟瀟・雪解 他七篇
永井 荷風
永井荷風『雨瀟瀟・雪解 他七篇』。同一底本的分册已合并为一书。收入:雨瀟瀟、雪解、榎物語、監獄署の裏、散柳窓夕栄、寐顔、ひかげの花、勲章。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,414 字 · 289 页
初めて言葉を交してからもうかれこれ三月ぢかくになるが、今だに着通しに着ているお千代の着物を見ると、品物は金紗の上等物でありながら、袖口や裾まわりの散々にいたんだのを、湯屋へ来る時などは素肌にきて、腰巻などは似もつかぬ粗末なものを取返えもせずに締めている。この様子だけでも、老婆はもうそろそろ話をし出してもいい時分だと考えて、銭湯への行きがけ、内の様子を見がてら、それとはなく尋ねて来たのである。障子も破れ、畳も汚れた貸二階に据えてある箪笥火鉢から、机座布団に至るまで、家具一切はかつて資産のある種子の家にあったものばかりなので、お千代の人品に比較して品物が好過るところから、老婆は最初の想像とは案に相違して、お千代夫婦の境遇を不審に思ったが、しかしとにかくここまで零落していれば、以前豊に暮していただけ、かえって話は早いかも知れないとも考えた。
「檀那様は毎日お出かけですか。」こんな事から話をはじめた。
「いいえ。きまっておりません。唯今遊んでいるもんですから。」
「お一人で、お留守番ばかりしていらしッちゃおさむしいでしょう。わたくしなんぞも、女中はいませんし、そう一日針ばかりも持っていられませんから、時々人様のところへお邪魔に出掛ると、つい長尻をしてしまいます。