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あめしょうしょう

雨瀟瀟・雪解 他七篇

永井 荷風

永井荷風『雨瀟瀟・雪解 他七篇』。同一底本的分册已合并为一书。收入:雨瀟瀟、雪解、榎物語、監獄署の裏、散柳窓夕栄、寐顔、ひかげの花、勲章。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,414 字 · 289 页

青空文庫

しかしそうなった所で、お千代の身にはさして利害はない。重吉と別れたからといって、他に生活する道のつくわけでもなければ、また一緒になっていたからとて、重吉が失職したきりでは、やはり同じことである。重吉が定業にありつく時まで、どうか知れずにいてくれるように……。これが漠然とお千代の冀うところであった。

その年の暮はさほど寒さも烈しくはなく、もう二、三日で大晦日が来ようという比になった。十二時打ってから半時間ばかり、いつもの刻限にお千代はバアから帰った振りで、実は婆さんの家から、その夜は烏森へ廻り、そこから円タクに乗って来た。コートの紐を解きながら二階へ上ると、重吉も今し方帰って来たばかりと見えて、帽子と二重廻とは壁に掛けてあったが、襟巻も取らず蹲踞んで火鉢の消えかかった火を吹いていた。

「銀座は歩けないくらい人が出ていたよ。」

「年の市でしたね。」

「銀座の方じゃ、カフェーは二十五日から毎晩二時までやるんだとさ。神田の方よりも勉強するね。」

「やっぱりね、場所がいいから。」とは言ったものの、お千代は神田辺でもカフェーは二時までやるのかも知れないと始めて気がつき、話をそらすために、片寄せてあった置炬燵を引出し火鉢の炭火を直しはじめると、重吉は懐中から蟇口を出しながら、